しばいぬ通信

  • インタビュー
    冬の定番は思い出の味 寒もち作り
    如月
    12
    2015

    冬の定番は思い出の味 寒もち作り

    稲作の盛んな上毛町では、寒もち作りが冬の光景です。赤、青、黄色……。伝統的な保存食は色彩の乏しい冬に華やぎを与えてくれるだけでなく、一人ひとりの思い出に彩られています。

    「ちょっと手伝ってよ」
    「ようやらん」
    「もう、いつもそうや」

    掛け合いをしているのは上毛町原井の小木戸秀喜さんと妻の緑さん。小木戸家は緑さんが寒もちの作り手です。薄く切ったもちを大きなかごに並べ、室内で乾燥させます。鮮やかなもちの色彩は、練りこまれた青のりやクチナシ、干しエビなどです。

    クチナシをむくと指まで黄色に

    クチナシをむくと指まで黄色に

     

    「昔の方が素朴な味わいだったかなあ。ものがないから何も入ってなかったけど、うまかった」

    そう言いながらも、去年仕込んだ寒もちをぱくり。手の代わりに口を動かすのは秀喜さんです。美味しそうです。秀喜さんにとっての思い出の味は小学生だった半世紀前にさかのぼります。日の沈んだ後の校舎で、当直の先生と食べた寒もちの味が忘れられません。

    夕食後に友達と一緒に、学校に泊る先生のもとへ遊びに行っていたそうです。道路がまだ舗装されていなかった当時、少年たちは窓からこぼれる明かりを頼りに、真っ暗な砂利道を歩きました。

    誰もいなくなった夜の校舎は急速に熱を失い、静けさだけが漂います。唯一明かりが灯っているのは当直室。少年たちが押し掛け、昼間のようににぎやかになります。ストーブの周りに自然と輪ができ、笑い声が絶えませんでした。

    寒もちづくりはもち米を蒸すことから始まります。

    寒もちづくりはもち米を蒸すことから始まります。

     

    「家の造りが今よりしっかりしてないから、ずいぶん寒かったはずなのになあ。何人かで遊びに行って、いつも誰かが鼻を垂らしとったけど、あのころは不思議と寒さを感じんかった」

    ストーブの上には、いつの間にか並んだ寒もち。先生が用意してくれていました。火に掛けられた寒もちに視線が集まります。焼き上がると次々に手が伸びて消えていきます。夕食を済ませてきた少年たちにとってデザートでした。

    小木戸秀喜さん。寒もちとは関係ありませんが、かわいかったのでお孫さんも一緒に

    小木戸秀喜さん。寒もちとは関係ありませんが、かわいかったのでお孫さんも一緒に

     

    「懐かしいな」と秀喜さん。かつての通学路はアスファルトに舗装され、学び舎は統廃合で更地になりました。味は変われど、今も形を変えずに作り続けられる寒もち。
    焼きたてを手渡され、頬張るとほんのりとした甘みが口に広がりました。

     

    【作り方】
    材料(1回分)
    もち米  2升
    砂糖 500g
    バター 80g
    具材(青のり、クチナシ、ショウガ、干しエビ、チーズなど。量はお好みで)

     

    もち米を蒸します。今回は穴あきドラム缶に水をたっぷり入れた釜を設置し、米を布に包んだセイロを乗せました。もちろん炊飯器でもできます。

    蒸す蒸す

     

    電気式もちつき機でクチナシや青のりなどを混ぜたもちが次々に仕上がります。手仕事にこだわり杵と臼を使えば、達成感と筋肉痛も得られます。

    寒もち・クチナシ

     

    熱いうちに型に入れて初日の作業は終了。3日間寝かせた後、取り出した寒もちを5㌢幅に切り、さらに一晩寝かせ、数㍉幅に薄く切り分けます。

    寒もち・切る

     

    かごに並べて室内で1カ月ほど干して完成です。直射日光は避けます。寒もちを乾燥させている間にネズミに食べられないよう注意してください!

    かごに並べて室内で1カ月ほど干して完成です。直射日光は避けます。寒もちを乾燥させている間にネズミに食べられないよう注意してください!