しばいぬ通信

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    地上に咲く、冬の花火 原井地区のどんど焼き
    弥生
    02
    2015

    地上に咲く、冬の花火 原井地区のどんど焼き

    川沿いの田んぼに、ある日突如として大樹が現れます。山国川沿いにある上毛町原井地区の「どんど焼き」です。住民が2日がかりで用意したやぐらは炎に包まれ、わずか30分足らずで燃え尽きます。住民総出で同じ時間を共有する。あっという間で、地上に咲く、冬の花火のようです。

     

    原井地区は町内でも一、二を争う大きさで、高さは約8㍍(しばいぬ調べ)。地域を挙げて2日がかりで制作します。

    原井地区は町内でも1、2を争う大きさで、高さは約8㍍(しばいぬ調べ)。

     

    年明けに行う地域が多くありますが、当地では2月に行う習わしです。どんど焼きのハイライトは赤々と炎を燃やすところですが、そこに至るまでの準備も大きな楽しみです。初参加のコラム担当者も加わり、徐々に皆さんとなじんでいきます。チェンソーで木々や竹を切り倒し、ユンボ、クレーン車で運搬。全て自分たちの手でこなすのが原井流、と実にワイルドです。役者がそろっています。「なんでもできる、百姓が一番すごいんや」と古老がにやり。誇らしげです。

     

    切り出した木や竹でやぐらを組みます。3時間足らずで完成する手際の良さが光ります。

    切り出した木や竹でやぐらを組みます。3時間足らずで完成する手際の良さが光ります。

     

    汗をかき、泥まみれになりながらも笑顔が絶えません。「どんど」を組み上げて準備完了。開始を待つ間に、たき火を囲んで宴会が始まりました。

     

    「原井に来たからには腹いっぱい食べろ」

    「どんどが始まるまで、どんどん食べて」

    「汁にコショウ、こしょうっと入れてね」

     

    怒涛のダジャレ攻勢の洗礼を受け、次々に料理を手渡されます。シカ刺し、シシの焼肉、にぐい、酢もち、シシ汁……。昔、味わったことのある感覚を思い出しました。盆正月の親戚の集まりのようです。

     

    日本酒、ビールに焼酎も回ってきます。力仕事の後に酌み交わす酒は、砂漠で口に含む夜露のごとく、五臓六腑に染み入ります。4カ所のたき火の周りには人の輪。わいわい、がやがやと楽しそうな雰囲気に、ついつい酒量が増えて酔いが回りました。

     

    ほのぼのとしたひととき

    準備が終わりほのぼのとした時間を過ごします。

     

    火には日本酒を入れた竹の節がくべられているのは「かっぽ酒」です。温めながら竹の風味を酒に移していきます。焦らず、じっくりと。飲み干すまでよりも、燗する時間はずいぶん長くかかります。
    野趣あふれる調理法はどんどの準備とどこか似ています。どんども時間をかけて作業をともにすることで、人と人が馴染んでいくのです。年に1回地元に戻ってくる人も、初めて参加する人も、一丸となります。そして知らず知らずのうちに、地域の歴史、文化を担っていくのでしょう。

     

    かっぽ酒はするすると喉を通ります。酒器も竹です。

    かっぽ酒はするすると喉を通ります。酒器も竹です。

     

    尋常ではない量の煙に車を止めて見入る人もいました。

    尋常ではない量の煙に車を止めて見入る人もいました。

     

    どんどの鮮やかな緑色が赤々とした炎に包まれていきます。火が入ると、またたく間に燃え広がりました。誰もが一つの炎を見つめる時間を共有する。贅沢な昼下がり。燃え尽きるまでのわずかなひと時。流れゆく時間を意識し、営まれていく日常に感謝します。準備に労力を惜しまないのが分かる気がしました。

     

    火勢は見る間に強まります。

    火勢は見る間に強まります。

     

    灰と煙が風に乗って上昇し、流されていきます。無病息災や家内安全、記事上達の願いも一緒に舞い上がり、昇華されたことでしょう。