しばいぬ通信

  • インタビュー
    真っ直ぐ育つ農業の芽 青島牧人さん 農家 30歳 上毛町東下
    弥生
    23
    2015

    真っ直ぐ育つ農業の芽 青島牧人さん 農家 30歳 上毛町東下

    仕事に慣れ、生活にゆとりが出て、新車が欲しくなりました。あなたならどんな車を想像しますか。ハイブリッドカー、それともSUV、燃費のいい軽四……。

    「お金を貯めてトラクターを買いたい」と農業への真っ直ぐな思いを語るのは青島牧人さんです。生まれ育った関東を離れて就農3年目。雨にも、風にも、暑さにも負けず、新天地で芽を出しています。

     

    レタス、キャベツ、米、麦……。3年間で20種類近くの作物を育てました。

    レタス、キャベツ、米、麦……。3年間で20種類近くの作物を育てました。

     

    茨城県の養豚業を営む企業から、たまたま見つけた求人で、実地で農業を学べると当地の会社にて転職しました。大学時代は畜産学科で学んだものの、当時は農業に関心がありませんでした。そんな青島さんが農家を志したのは独立を夢見たからです。

    「従業員みたいな立場で一生を終えたくないなって思って。生きていく上で一番大切なものの一つが食べ物。その上で自分一人でもできそうな仕事を考えると農業でした」

    昨春、勤め先を退職して念願の独立を果たしました。現在は地元農家から田んぼと畑を借りて、米、レタス、キャベツなどの作物を育てています。「冬場は割と暇なんです」と話しながらも手際よくレタスを収穫します。日に焼けた手はひ日差しの弱い時季でも浅黒く精悍です。「外での作業ばっかりで日焼けするんで、肌がぼろぼろ。老けましたよ」。言葉の割に表情はどこか楽しそう。

     

    自作の収穫包丁でさくさく切ります。

    自作の収穫包丁でさくさく切ります。

     

    認定農業者に選ばれ、一国一城の主として戦う意欲は十分です。「役場の人から、やっていけるところを見せてください、とプレッシャーをかけられました。今は社長。一人ぼっちの社長ですけど。高い値段でも買ってもらえる工夫をしたい」。

    独立をきっかけに、空き家バンクで物件を探して一軒家に引っ越しました。「畑を借りるならこまめに手入れができるよう、近くに住んだ方がいい」と以前の勤め先の社長からアドバイスを受けたからです。いつでも目の届く範囲に住んでいた方が、貸してくれたオーナーさんとしては安心できます。

    せっかく貸した畑の畦にだけ下草が伸び放題では、貸し手が不安になりますし、近隣の農家も居心地のいいものではありません。田畑は 会社のように閉じた空間ではなく、青空でつながる開けた場所です。しっかり草を刈り、汚れていたら掃除をする。畑の管理も近所付き合いと同じです。

     

    倉庫が工房に。金属の板を削り出して刃物を作ります。

    倉庫が工房に。金属の板を削り出して刃物を作ります。

     

    青島さんが借りた物件は和洋合わせて6部屋、倉庫に加え、家庭菜園のできる庭まで付いています。

    葉物野菜だけでなく、刃物も趣味で作る青島さんは、広々とした倉庫が工房になり重宝しているそうです。贅沢な間取りに陽当たり良好、清閑、夜は星がきれいと言うことなしのようですが、一つだけ悩みがあります。「広すぎて部屋が余ってもったいない。嫁いでくれる女性を求めてます」。

    同じ独身の男として気持ちは分かります。ですが、空き家バンクでは2人で住む物件はご紹介できても、残念ながらお相手を見つけることはできません。「自分から頑張らないと。結局のところは自分次第だと思います」という青島さんに心からのエールを送ります。

     

    玄関先には昨秋収穫した米が豪快に積まれています。

    玄関先には昨秋収穫した米が豪快に積まれています。

     

    独り立ちをして終わり。ではなく、ようやく農家ライフの始まりです。昨夏には熱中症で搬送されたり、今冬は作物がヒヨドリに荒らされたりと順調に進んでいるわけではありません。それでも、踏まれて強くなる麦のように、日々大きく成長していくのです。